花村社会保険労務士事務所
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Q | 遅刻に基づく賃金カットは減給の制裁にあたりますか? |
A | 労働者が、労働すれば賃金債権が発生します。この賃金債権からペナルティとしていくらか差し引くルールを設けることは違法ではありません。しかし、遅刻や早退をした場合は、その時間について労働を提供していませんから賃金債権は発生しません。引かれて当たり前です。したがって、その分の減給は、減給の制裁にあたりません。ただし、遅刻や早退の時間に対する賃金額を超えるような減給は制裁とみなされ、減給の制裁の制限の適用を受けることになります。 例えば、「30分を超える遅刻は、1時間の遅刻とみなす」というように遅刻の時間を常に切り上げる旨の規定をしたとしましょう。1日8時間で8,000円をもらっている労働者が、35分の遅刻をした場合、労働時間は7時間25分で1時間分引かれて7,000円しかもらえないことになります。この場合の25分は減給の制裁にあたります。 法91条では、減給の制裁に関する制限を規定しています。1回の事案についての減額は、平均賃金の1日分の半額以内でなければなりません。例えば、平均賃金8,000円の労働者に対しては4,000円を超える減額は認められないということになります。また、複数の事案についての減額は、一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはいけないと規定しています。ここでいう一賃金支払期とは、週休の人もいる訳ですから、1か月の所定内とは関係がありません。そして、実際に支払われる金額が基礎となります。例えば、1か月働いて10,000円の労働者の1回あたりの上限は1,000円です。したがって、減給すべきが2,000円ならば次月に繰り越されて減給が為されることになります。 賃金は労働者にとって唯一、生活の糧となる重要な労働条件の一つですので、減額する行為については、このようにある程度歯止めを掛けて、労働者が著しい不利益を被らないように保護しています。 |